今は大学生になった息子が、小学校の1年生の時地元のサッカークラブに入りたいと言い出した。
ずば抜けて運動神経が良いわけではない息子がスポーツを自分からやりたいという。
親としてはもちろん応援したいと思った。
ただ、その当時息子はスイミングクラブに入っていて(強制的に親に入れられた)、行きたくないと言っている時期だった。
背泳ぎをしていると背中の下に魚が泳いでいるような感じがするとか、水があまり好きではないようなことを言っていた。
目の前にある嫌なことから逃げるために、別の習い事に逃げるように私には感じられた。
今考えれば、結局親のエゴというか自己満足でしかないと思うが、当時は本気でそう思っていた。
このまま目の前のものから逃げる癖をつけてはいけない。
そんな感情から息子と3つ約束した。
1つ目は、半年間、毎日朝親子二人でサッカーの練習をして、ある程度うまくなってからクラブに入ること。
2つ目は、スイミングクラブはそれまで続けること。
3つ目は、途中で朝練が嫌になって続けれれないなら、サッカークラブはあきらめること。
その日から、少し早起きして二人でパス練習から始めた。
私は、ある程度うまくなってからクラブに入った方が、周りの子供ともなじみやすいし、本人も自信がついて楽しめると考えた。
私も小学生から野球を始め、高校でラグビーをやり、今はサーフィンなどを楽しんでいる。
運動は苦手ではない。
ただ、サッカーを本格的にやったことはなかった。
そこで、まず自分がサッカーをできるようになろうと考えた。
サッカーの基本といえばやっぱりリフティングだ(この考えがまず素人っぽい)。
まずは自分がリフティング100回できるようになろうと決めた。
庭でボールを手から落として蹴ってみる。
そういえば、小学生で野球とサッカーどちらかをやろうと決めるとき、リフティングが15回すぐできるようになったら(多分15分くらいで)、サッカー選手を目指そうと思いチャレンジして、できなかったことを思い出した。
ゼロから始める場合、リフティングも意外と難しい。
少しやってみて100回は無謀な考えに思えてきた。
手と違って、思うようにボールを扱えない。
次第にイライラして、地面に八つ当たりしたり、モモを手でたたいたり(気合を入れる昭和スタイル)しながら続けてみた。
ふと見ると、息子が部屋のカーテン越しに格闘する私を見ていた。
当時はまだ30代前半だったが、いい大人が、ふだん威張っている父が、なんともぶかっこうにボールと向き合っている。
全然うまくできない。
そんな姿を見せながら、その日は1時間ほど続けてみた。
最初は感覚がつかめなかったが、なんとなくできてきたかなというくらいで初日は終わった。
私は息子との朝練を始める前に、自分の朝練(リフティング)を日課にした。
毎日やっていると、少しできるようになり、また停滞(踊り場状態、プラトーともいう)し、また少しできるようになる。
この停滞状態でやめたくなる。
ここを我慢するとまた少しできるようになる。
体感として最初5回、15回の壁が来る。
ここはすぐ超えられる。
ここから50回の壁が結構長い、たぶん2週間くらいだったか。
そこから50回付近をずっとさまよう。
たぶん大半の人はここでやめたくなる。
私は息子の手前、我慢して続けた。
その間、たぶん2か月くらいかかったか、1か月だったか忘れてしまった。
そして、ついに100回をクリアする日が訪れた。
とにかくうれしかった。
50回以上できるようになると、体がボールになじんで、あとは集中力の勝負になってくることもわかった。
自分が苦しみながらできるようになると。素人ながら子供にも自分の体験を教えれれるし、うまくできない悔しさがわかる分、寄り添いながらサッカーを続ける気がした。
半年間サッカーの朝練を続け、息子はスイミングをやめてサッカークラブに入った。
スイミングでは泣いて車から降りない時もあったのに、初日から誰も知り合いのいないチームになじんで、すぐ友達を作り楽しそうにサッカーを始めた。
私は、人に教えるにはまず自分ができるまでやってみることの大切さを学んだ。
それ以来、まず自分ができるようになることを実践するよう心がけている。
まずは自分から、これが意外と大事だと思う。
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